海外安全情報20140507

犯罪発生状況、防犯対策

1 概況

タイ警察が発表した2012年の犯罪統計によれば,殺人事件(未遂含む)が8,789件,傷害事件が13,422件,強姦事件が3,555件,強盗事件が408件,盗難事件等が45,560件発生しています。また,銃器不法所持事案では32,556人,薬物犯罪事案では400,494人が検挙されており,薬物や銃器の氾濫が殺人事件(未遂を含む)などの凶悪事件の多発の要因とも言われています。

一方,タイにおいて日本人が巻き込まれる被害の圧倒的多数は窃盗,詐欺等であり,この数年間において日本人が殺人事件などの凶悪事案に巻き込まれる事例は少ない状況となっていますが,タイにおける凶悪事件発生率は,日本と比べても非常に高い水準で推移していますので,十分注意してください。

(参考1)【2012年のタイにおける邦人被害件数
(在タイ日本国大使館及び在チェンマイ日本国総領事館)
     ・殺人(未遂含む): 0件
     ・暴行・傷害    :10件
     ・窃盗,強盗,詐欺:308件
(参考2)【2012年の日本における犯罪認知件数】
     ・殺人(未遂含む) :1,030件
     ・強盗       :3,658件
     ・窃盗       :1,040,447件

2 日本人の被害例

 タイ国内,特に首都バンコクにおいて,若い旅行者を中心に,以下のような手口の犯罪被害に遭う例が多発しています。これらに共通するのは,タクシーや三輪タクシー(トゥクトゥク)等の運転手を含め,見知らぬ人物から声を掛けられたときや,安易に話に乗ったことが被害に遭うきっかけとなっています。見知らぬ人物から声を掛けられた際には十分警戒し,軽々しく信用しないことが肝要です。

(1)睡眠薬強盗

 有名な観光スポット等において,親しげに声を掛けられ,飲食(酒類,ソフトドリンク)を共にして気を許した頃に睡眠薬入りの飲み物を勧められ,知らずに飲んで意識が朦朧となったところで,現金やクレジットカード等を奪われるケースです。

 中には,盗まれたクレジットカードを不正使用され,後刻,同カード会社より多額の請求を受けたというケースもあります。

 また,最近では,バックパッカー風の若者が集まるカオサン通り,パタヤでは,親しくなった外国人(犯人グループ)と食事を伴にして,飲食物に薬物を混入され,意識が混濁しているうちに現金や所持品を奪われ,そのまま別の場所に運ばれ,路上に放置されたという事件も発生しています。

(2)いかさま賭博

 様々な手口で賭博に誘われ,金品をとられるケースです。

 例えば,「妹が日本に留学するので,日本の事情を話してあげてほしい。」等と親しげに話し掛けられ,自宅と称する建物に巧みに案内されます。家に着いても妹はおらず,暇つぶしにトランプゲーム(ブラックジャック)に誘われ,さらに,「上手な勝ち方(いかさま)を教える。まもなく金持ちのブルネイ人がブラックジャックをするために来るので,一緒にそいつからお金を巻き上げよう。」といかさま賭博に誘われるケースがあります。

被害者が話に乗り,ゲームを始めると,最初は勝ち続けるものの,最後の勝負で多額の金額を賭けることとなります。ゲーム中,所持金では足りなくなることからクレジットカードで貴金属を購入して現金化し,莫大な金額を賭けるが,最終的に負けるか,又は勝ったところで,「続きは明日やろう。」等と言われます。

そして賭け金や担保となる貴重品(時計,カメラ,パソコン及び携帯電話等)をその場に残すよう言いくるめられて,ホテルに送られるが,翌日の約束の時間になっても迎えに来ないといったケースもあります。(これらの手口は状況により変わることもあるようです。)

(3)見せ金詐欺

 中東系犯罪グループによる,通称,「見せ金詐欺」という手口による窃盗犯罪のケースです。昼夜を問わず,スクンビット界隈で発生しています。

まず,声掛け役の犯人(主に男性)が,親しげに,「日本人ですか?今度,日本に行きます。1ドルは日本でいくら位ですか?その前に日本のお金見てみたい。OK?」等と英語と日本語を交ぜながら近づいて来ます。

つい,財布を渡してしまうと,相手が,「これが日本のお金ですか?」等と会話をしているうちに,その男性の知り合いと思われる別の男性が1,2人現れます。この男たちが,被害者の視界を遮った上で,財布からお金を抜きとり,最後に何事もなかったように「ありがとう。」と言って,財布を返します。被害者側は,暫くして財布の中身を確認してはじめてお札が数枚無くなっていることに気がつきます。

(4)宝石・洋服のキャッチセールス

 宝石・洋服のキャッチセールスは,タクシーの運転手が,有名な観光スポットである王宮や寺院等の周辺で,声を掛けるケースが殆どです。

宝石店や洋服(オーダーメイドのスーツ等)店に連れて行かれ,店員から,「タイ北部で産出した貴重な宝石です。日本で高く売れます。」,「カシミア(タイシルク)100パーセントのスーツ(シャツ)です。」等強引に商品を売り込まれます。商品を購入(洋服であればオーダー)した後に,商品を冷静に調べると,粗悪品や自分の希望と異なる商品を購入したことに気がつきます。

タイ警察は,このようなケースを,商取引上のトラブルとして扱うことが殆どであり,店側から返金を受けることが難しいのが実情です。つきましては,このようなキャッチセールスには乗らず,商品の購入の際は,慎重に検討した上で,信用のおける店舗で購入して下さい。なお,キャッチセールスを行う者はタイ人だけではなく,最近は,アジア系,白人系の外国人も増えてきています。

(5)わいせつ犯罪

 夜間,女性が一人でタクシーやバイクタクシーに乗車した際に,車内で運転手からけん銃やナイフなどの凶器で脅かされたり,わいせつ目的で連れ回されたりする事件が発生しています。また,旅先で親しくなった男性から突然わいせつ行為を受ける事案も発生しています。

強制わいせつ等の性犯罪は,プーケット,クラビー,パンガー島等のビーチリゾートで発生しており,女性旅行者が,被害者となるケースが多いと言われています。

パンガー島に渡る船の中で女性旅行者を狙ったわいせつ行為や,ビーチボーイと呼ばれる海岸で働く若い男が砂浜で女性を物色し,マッサージや飲食物等サービス行為を行う際に,性的関係を強要するという事案があります。性犯罪の被害者は,被害を申告しないことが多く,性犯罪を潜在化させる原因にもなっていると言われます。

また,地方ばかりではなく,バンコク都内でも発生しています。この他,最近はバンコク都内の電車内及び長距離鉄道内での痴漢行為も発生しています。

(6)集団スリ

 バンコク都内のデパート,駅等において,被害者がエスカレーターを利用した際に,スリ・グループが前後を挟み,エスカレーターの降り口の直前で,前方の者がつまずくふりをして,被害者が立ち止まるような状況をつくります。その後,後方の仲間が将棋倒しになって被害者に体を押しつけ,その際に被害者のポケットやウエストポーチ等から財布を抜きとるという手口です。なお,前後を挟む犯人グループは女性の場合もあります。

  また,バンコク都内を中心に,窃盗団によると思われる盗難事件が発生しています。窃盗団は,5人から10人位の人数で,チームワークが良く,役割分担が出来ており,リーダーを中心に,被害者を見つける役,見張り役,逃走を助ける役,受け取り役等がいるようです。

 代表的な手口 として,「実行役」が,口の中に小型の刃物を仕込んで,被害者に近づき,バック等を切り裂き,中から財布等金品を抜き取り,「受け取り役」に品物を手渡し,それぞれが連携して,犯行現場から立ち去ります。これらの犯罪は,有名寺院,王宮の周辺等で発生しています。外国人観光客が主な犯罪のターゲットになる傾向があります。

(7)スリ,置き引き,ニセ警官

 チャトチャック市場(ウイークエンド・マーケット)やデパート,ホテル,空港,バス等の混雑する場所において,バッグを切り裂かれ,中の貴重品を抜き取られる事件が発生しています。

 また,ホテルのビュッフェ形式のレストランやロビーにおいて,貴重品から目を離した隙に,バッグ等を盗まれる事件が発生しています。

タイ北部では,チェンマイ市内旧市街のワローロット市場,サンデーマーケット等混雑する場所において,スリや置き引きの被害が発生しています。

 中東又は西洋人風の男性(私服)が警察官を装って近づき,外国人の事件を捜査中であると言いつつ,持ち物を点検する際に,財布から現金を抜き取るという手口もあります。

(8)バイクを利用した犯罪及び路上強盗の手口

 ひったくりは,歩行中,バイクに乗った犯人が後ろから近づき,ハンドバッグ,ショルダーバッグ等を奪い取っていくものです。抵抗すると引き倒され,背後から刃物で刺される事件が発生しています。

 近年,バンコク都内を中心に,「デックウェン」と呼ばれる若者による暴走族が社会問題となっています。彼らの無軌道振りは,新聞等でも報道されています。夜間,バイクの爆音を響かせて走行し,強盗,殺人,恐喝,窃盗,薬物等の犯罪を敢行します。一般市民に対する犯罪を敢行する他に,デックウェン同士の抗争により,死者が出ることもあります。2013年12月,モーチットバス停付近で地元住民とデックウェンの抗争事件が発生し,同事案は,刃物,銃が使用され,死者が出ています。

路上強盗は,夜間,裏通りやひと気のない公園を歩いている際に,いきなり棒で殴られたり,ナイフで脅されて所持品を奪われたりするケースが報告されています。

(9)契約トラブル

 業者との契約前に必要経費を事前に請求され,支払後に相手と連絡が取れなくなる等の契約トラブルや悪質な業者による航空券代金,偽査証の作成等のトラブルが発生しています。また,旅券の査証が真正でない場合に逮捕されることを避けるために,業者を通じて査証取得する場合は注意が必要です。

3 犯罪被害多発地域

 バンコク都内では,特に旅行者が集まる観光スポットや繁華街,デパート等大型商業施設周辺,若い単独旅行者が利用するゲストハウス(安宿)周辺において,犯罪が多発しています。

 また,チェンマイ市内でも,旧市街を中心に犯罪が発生しています。特に都市部の歓楽街やスラム街等は十分な注意が必要であり,不用意に狭い路地へ入り込むことは危険です。

4 防犯対策・犯罪防止3ない用語「近づかない,慌てない,楽観視しない」

(1)「近づかない」

 犯罪が発生する可能性のある場所に「近づかない」と言うことです。

タイ,特にバンコクにおいては,歓楽街や繁華街やスラム街が混在します。それらに近づかなければ,犯罪被害に遭う確率は格段に下がります。特に「夜間,近づかない」と覚えてください。

(2)「慌てない」

 不幸にも犯罪が身に降りかかってきた場合の対処です。

例えば,タクシー強盗などに金銭を強要された場合,慌てずに冷静に対処し,場合によっては,相手の要求に抵抗しないことが安全策であることがあります。

(3)「楽観視しない」

 一般的に他の外国に比較して,「タイは安全,治安が良い」と言われていますが,市街地における発砲事件,爆発事件等が発生しています。

「タイなら大丈夫,安全」と自分の中に勝手な安全基準を持って,タイの犯罪情勢を楽観視してはいけません。

(4)対処要領

 上記2(1)~(4)に関しては,見知らぬ者から声をかけられても安易に信用しないことで防止できます。また,他人から勧められた飲食物には気を付ける,買い物は信用のおける店を利用する,儲け話には乗らない等の注意が必要です。 

 上記2(5)に関しては,女性が特に単独でタクシー等に乗車する際は,車番や運転手の名前を控える等慎重に対処してください。また,どんなに親切そうに見えても,安易に相手を信用しないことが肝要です。

 上記2(6)~(8)に関しては,バッグ等は体の前でしっかり持ち,現金・貴重品は分散して保管する,多額の現金は持ち歩かない,万一に備え,海外旅行保険等に加入しておく等の対策が重要です。

 上記2(9)に関しては,相手を容易に信用せず,公的書類を取り寄せるなどして先方の身元や背景を確認することが肝要です。先方の言動等に少しでも疑わしい点がある場合は,求めに応じて安易に支払うこと等はしないでください。